機能的非識字から考える学習障害

「平均的な理解力」はほんとうに共有されているものなのか?

国立情報科学研究所の新井紀子さん。AIが大学入試問題をどのくらい解けるか、どのようにして解けるようになっていくか といった研究で知った方も多いかと思います。たしか昨年度はMARCHは突破できるとか発表なさっていました。今年の結果はこれからでしょうか。

そのほか、彼女の研究の中で、衝撃をもってうけとめられたものは、「教科書の文章を読めていない。音読はできても内容の理解ができいない」生徒の割合の多さ。こうした現状に、さらなるデータの収集や、一般に周知を広めるために、読解力テストの実施(提供)、また教育方法を考案すると述べておられます。(教育のための科学研究所 ホームページを参照)

ABEMAで対談されながらの解説には例文も複数挙げておられるので、YouTubeでみてましょう。
この動画の中でも、最初に挙げてくださっている「アレクサンドラ構文」と呼ばれているものを紹介します。
ちなみに”知る人ぞ知る”の例文で、多くの塾などでも引用して解説しています。

「Alex は男性にも女性にも使われる名前で、
女性の名 Alexandra の愛称であるが
男性の名 Alexander の愛称でもある。」

この文章において、以下の文中の空欄に当てはまる最も適当なものを1~4の中から選びなさい。

<Alexandra の愛称は(   )である。>

1 Alex  2 Alexander  3 男性  4 女性

ABEMAにて紹介 「リーディングスキルテストから」

即答、あるいは(なにかひっかけ?)と読み直して数秒というところでしょうか。
この問題の正答率も紹介されていますが
中学生38% 進学校の高校生65% ちなみに4と答えた割合 それぞれ 39% 26%

まあまじめに答えたということが前提ですが。

次はどうでしょう。これは実際の中学理科の教科書からとのこと。ちなみにご著書「シン読解力」にはそれぞれどこの教科書の何ページ、と紹介されているそうです。(つまりいろいろな読み取りの難しい例があるということ)

アミラーゼという酵素は、グルコースがつながってできたデンプンを分解するが、
同じグルコースからできていても、形が違うセルロースは分解できない。

この文章において以下の文中の空欄に当てはまる最も適当なものを選択肢から一つ選びなさい。

<セルロースは(      )と形が違う。>

1 デンプン  2 アミラーゼ  3 グルコース  4 酵素

一読しては、「はあ?」と思った方。あなたのほうが多数派です。

この正答率は 16.3%とのこと。確率で行けば25%が正答してもよさそうですが・・・。
二つの問題が連続していたとすると、「1が二つ続くわけはない」などという迷いが入っていた可能性はどうなんでしょう。それからリーディングスキルテストはお試し体験できますが、制限時間がありますので、もしかすると生徒たちは制限時間内で選んだのかな?とも思います。

アミラーゼ問題文が、悪文かどうか。つまり、文章の問題なのか、理解できない側の問題なのか?
皆さんはどう思いますか?

ポイントは知識であるように思います。
デンプンもセルロースも、同じくグルコースからできている。しかしそのふたつは、グルコースのくっつき方が違い、異なる形をしている。その理由により、アミラーゼはデンプンを分解できるのだが、セルロースは分解できない。


ということがわかっていれば、文章を読解する力はさして必要はない。

どこがよくないかって 「同じグルコース」 じゃなくて、「「同じように」「同様に」「同じく」でしょ?「同じグルコース」と言われれば、」グルコースにいろいろ種類があるのか?ととらえてしまう。グルコースに種類なんてないでしょ!という前提があれば済むとも言えますね。

この文章の何が問題かというと、文の構造の問題というよりも
「わかっている人が わからない人に説明するための文章とはどのようなものであるべきか」ということだと思うんです。
ちなみに リーディングスキルテストをやってみましたが、こうした悪文はなく、良問でした。(やってみるならPCでやりましょう。スマホでは問題文全体が一度には見えず、タイムロスが出ます。)

Alex構文が読み取れない水準はそれは問題とは思うけれども・・・。(あくまで自分基準)
「ガソリン問題」というものも紹介されています。これも悪文。なにしろ別の動画で機能的非識字を取り上げた知識人が堂々と間違いを答えてましたので。

私としては こうした「悪文」を端的でしかし一度で理解できるような文章に書き直すという作業ができることも大事かなと思います。

別の例になりますが
「言外のもの」が読める人 というのも案外に少ないようにも以前から感じます。社会生活も私的な生活もまずまず適応的で、「学力」は平均以上で学歴・職歴もある人でも。

Yahoo!知恵袋でよく「映画のあのシーンはどういう意味ですか?」という質問を見ることがあります。(ここでは”釣り”かどうかは置いておきます)
「映画 Six sense の結末の意味が分かりません。最後に出てきた裸の人は何ですか?」とか・・・  あそこでああ~~~と腑に落ちるどんでん返しが体験できないとは気の毒ではあります。

大島弓子の「バナナブレッドのプディング」名作!とA先生O先生と同意見ですが、「全然意味わからなかった!結局何?」と言われて Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン という体験もあるのです。結末がはっきりしていろいろなことがわかりやすく言語化されていないと苦手な人もいる。(わたしは繊細なストーリが理解できるの、みたいな鼻持ちならない言いっぷりになっていないかドキドキしながら書いてます)

最後に
25年位前かなあと思う、朝日小学生新聞に名作といわれるコミックを毎週紹介している記事があったのです。まあ漫画評論家みたいな肩書の方が小学生向けに解説しているもの。
そこで!聞いてください!
萩尾望都「トーマの心臓」のトーマを「同性愛に悩んで自殺した少年」と!
何言ってるんですか。それなら夏目漱石の「こころ」の「先生」も「わたし」との同性愛に悩んで自死されたんですかい!

まあちゃんと読んでいないんでしょうねえと思ったけど、もしかして「読めて」いないのか?

これが僕の愛
これがぼくの心臓の音
君にはわかっているはず
トーマの心臓

私は今自分で自分の心臓を破って、その血をあなたの顔に浴びせかけようとしているのです。私の鼓動がとまった時、あなたの胸に新しい命が宿ることができるなら満足です。
こころ

*ちなみに 萩尾望都さんは 「こころ」からインスパイアされてはいないと明言なさっていますが、ときどきどのテーマの共通性について論じる方がおられますね。

高校2年生で「こころ」を学習し、感想文を書き、「トーマの心臓」は高校3年生のとき、「受験だけど読む?学年トップの〇さんも読んでるんだしいいんじゃない」みたいな言い訳をして熱狂したものです。同時期に読めていたらととても残念。
トーマが、先生 は何に働きかけようとしたのか、ユリスモールと「わたし」の心の状態は何と名付けますか?

萩尾望都の作品についていえば、「イグアナの娘」はTVドラマになったものの、「娘の虐待」に焦点が当たりすぎ、かつ驚くべき結末。なんと・・あ、ネタバレになるのでやめておきましょうか。
ドラマでは「その母は、ガラパゴス島に研究に来た学者である父に恋をしたイグアナだった(亡くなって正体が現れた)」という話になっています・・・・。

もう・・。しかしこれはあえてTV向けにそういうストーリーにしたのか?いや、全然面白くない。台無し。

しかし これも「そんなに言外の意味が読める人っているんだろうか」という私の体験的根拠です。