性加害行動は迅速に専門的関係機関につながねばならない理由
心理・精神科臨床
2025.07.27
「ひとりの性犯罪少年は生涯に380人の被害者を生じさせるとの試算がある」(藤岡淳子)
ずっと保管していた記事なのですが掲載年月日を記載しておらず、15年くらい前でしょうか。時期不明での引用は失礼ですが、ご容赦いただきまして、大阪大学大学院にいらした時期のインタビュー(朝日新聞)より
藤岡淳子先生は明快に根拠をもって主張されます。舌鋒鋭く常にあいまいさを排して語られます。
” 米国の研究では、14歳くらいから5歳以上の年下を相手にし出し、問題になって治療を受け始めるのが30歳くらいという結果がある。”
”少年期ののぞきから性器露出、下着どろぼうなどから始まり、適切な再犯防止策を施さなければ、
ひとりの性犯罪少年は生涯に380人の被害者を生じさせるとの試算がある””犯罪者はまず性的ファンタジー(空想)を作り上げる。そのファンタジーで自慰行為を繰り返し、やがて現実をそのファンタジーに合わせようとする。(中略)
他者の痛みが理解できないという歪みが大きくなると同時に、ファンタジーが昂じていくと悲劇的な事態につながり得る。
その過程は長い時間を経て進行している。”(中略)”日本では治療が必要なのに放置されている人が多いといえる。性的逸脱行動を問題として、真剣に考える姿勢が乏しいからだ。”
同インタビュー
性的関心 性的欲求 と犯罪との短絡的な解釈 が蔓延し、問い直されずにいることが適切な介入を阻んでいる要因でしょう。
以下はご著書の前書きから
先生が少年鑑別所で性犯罪者のグループワークを担当するが、「教えられてきたこと」と目の前の対象者とが重ならず、文献を求め、「目からうろこ」の論文に出会ったもの とおっしゃっている。引用を引用します。

” 「性犯罪者は、性的欲求や衝動にのみよるものではない。それは支配や優越、強さの主張といったさまざまな欲求から行われる。性犯罪は、けっして衝動的に行われるものではなく、自己の欲求を充足させるため、合目的的に、いわば計画的に行われる。少年の性犯罪はけっして一過的な性の試みとしておこなわれるものではなく、性犯罪行動の変化にターゲットを絞った特別な治療をしないかぎり、何度も繰り返される非常に習癖性の高い行動である。しかし、性犯罪者の査定と治療には特別な困難が伴い、したがって特別な訓練が必要とされる」(Perry and Orchard,1992) ”
藤岡淳子 「暴力の理解と治療教育」はじめに より
迅速な判断と対応・・のためにはことが起こってからAmazonで取り寄せて…では間に合いません。相談のお声がかかったらこれらを抱えて、場合によっては他の勤務を調整して駆けつけなければ。
そのためにも手元において、読んでおきたい全3巻。
日本にそのまま置き換えにくい部分も多少なくはないですが、原則的な重要なことは変わりません。



「どう動くべきか」の指針も
事態が起こった時に根拠をもって説明できるように。

ところで 謝罪 指導だけではダメなのはなぜか?それはこちらを読んでみましょう。

ロールレタリングをされている方ですが、誤解のないように。被害者に謝罪の手紙を書いたり、親に感謝の手紙を書く・・・とか(から)ではありません。
” いじめ防止教育は「いじめたくなる心理」からはじめる
(前略)いじめられた子供の期と持ち考えさせると、なぜ「いじめてしまうのか」を考える機会を奪うのです。”
岡本茂樹 「反省させると犯罪者になります」 p165
わたしも同感です。我々の中にあるサディズムや支配や優越の”快感”といったものをみとめることから出発しなければならない。きれいごとからではなく、弱く醜いこころ(それは太古から生物として備わったものも含む)があるということから出発しなければならない。 と思いませんか?
「相手の気持ちをかんがえなさい」と”指導”されますが
相手の気持ちが想像できるからいじめているのではないですか?
相手に惨めな気持ちや動揺、羞恥を「感じさせている自分」のパワー、優越性への快感ではありませんか?
囚人看守実験が示すように・・
子どもたちもそんなことはうすうす気づいています。
表面的に反省の言葉を述べ、心の中で冷笑しながら謝罪し、こころのなかにはほの暗いサディズムは育っていきます。
だからこそそのようなこころとともに、自分も他者も大切にして生きるとは?を考えることが大切で尊いわけですよね。いじめてしまったことに傷つき、長く悔やんでいる子もいます。そのような子にとっても、「なぜきずつけてしまったのか」をただのあやまちとして体験させるのではないことが求められるでしょう。
また別の視点から
いじめ も 性加害 も ある種の嗜癖という性質を持っています。
「性犯罪者を処罰・反省」だけではまた繰り返す理由 画期的アプローチ 条件反射制御法
昨年1日セミナーを拝聴し、先日の学会セッションも盛況でした。とはいえ実践部分はやはり1日セミナー位には出ないとイメージできないかと思いますが、徹底した再学習 報酬の消去。ワークブックも出ていますがやはり直接指導を繰り返さないと難しそうですね。でも腑に落ちる技法です。
「処罰だけでは変われないのに司法の扱いは全く変わっていない!」と平井慎二先生は語気を強めていらっしゃいました。
